図面に「エッジR0.2以上」「先端部R付け」と指示があるとき、その丸みをどの工程で付けるか決まっているでしょうか。切削での面取りは1個ずつの加工になり、手仕上げは作業者によってRがばらつきます。バレル研磨によるR付け・面取りは、数百〜数千個のエッジを同じ条件で丸める量産向きの方法です。本コラムでは、バレル研磨でRが付く仕組み、寸法への影響、極細・薄板・内径側といった難しいケースの対応を、SUS304・SUS430の加工事例をもとに解説します。
R付け・面取りのご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。図面の公差指示があれば併せてお送りください。
R付け・面取りにバレル研磨が選ばれる理由
R付け(エッジに丸みを付けること)や面取り(角を落とすこと)の目的は、バリの除去、けがや相手部品の傷つき防止、めっき・塗装の密着性向上、応力集中の緩和など多岐にわたります。加工方法は大きく3つです。
| 方法 | 特徴 | 向く条件 |
|---|---|---|
| 切削による面取り(C面・R面) | 寸法を正確に指定できるが、1個ずつの加工で工数がかかる | 大きなC面・R面、少量、精密な寸法指定 |
| 手仕上げ(ヤスリ・バフ) | 柔軟に対応できるが、作業者によってRがばらつく | 1個ずつの補修、局所的な処理 |
| バレル研磨 | 全エッジを同時に、バッチ単位で均一に丸める。細かいRが得意 | R0.1〜0.5程度の小さなR、数百〜数千個の量産、全周エッジ |
バレル研磨の強みは「全周のエッジに同時にRが付く」ことです。切削では指示した面しか面取りできませんが、バレル研磨では研磨石が当たるすべての角が丸まります。バリ取りとR付けを1工程で済ませられるため、量産部品ではバリ取り工程がそのままR付け工程を兼ねているケースも少なくありません。バリ取りの考え方はバレル研磨によるバリ取り|方式選定と仕上がり事例で解説しています。
バレル研磨でRが付く仕組みと寸法への影響
研磨石がワーク表面を擦るとき、平面よりも角のほうが集中的に削られます。角は面に比べて研磨石が当たる方向が多く、単位面積あたりの研磨量が大きくなるためです。その結果、時間とともにエッジが優先的に丸まり、Rが形成されます。
付けられるRの大きさは、次の3つで決まります。
- 方式:遠心バレルは回転バレルの数倍の遠心力が働き、短時間で大きなRが付く。回転・振動バレルは穏やかで、小さなRを狙いやすい
- メディア:硬く角のある研磨石ほどRが早く付く。仕上がり面を荒らしたくない場合は当たりのやさしいメディアを選ぶ
- 時間・投入量:時間を延ばすほどRは大きくなるが、平面も削られて寸法が動く
ここで見落とされがちなのが寸法への影響です。エッジにR0.2を付ける間、平面や外径・内径もわずかに削られます。図面の寸法公差が厳しい部品では、「Rの大きさ」と「削られてよい量」を両立する条件を試作で決める必要があります。方式ごとの研磨力の違いはバレル研磨の種類と選び方|4方式を比較、条件の組み立て方はバレル研磨の条件設計入門|回転数・時間・投入量の最適化、メディアの選び方はバレル研磨メディア(研磨石)の種類と選び方をご覧ください。

難しいケース:極細・長尺・薄板・内径側
R付けそのものはバレル研磨の得意分野ですが、ワークの形状によっては「Rを付ける前に壊れる」「狙った場所にRが付かない」という問題が起きます。当社の事例をもとに整理します。
| ケース | 課題 | 対応の考え方 | 事例 |
|---|---|---|---|
| 極細・曲げ形状 | 研磨中の衝撃で変形する。手作業では品質が安定しない | 治具にワークを1本ずつ通して整列・固定し、先端だけに研磨力を作用させる | SUS304 φ0.6mm曲げパーツ、先端R0.1〜0.2、遠心バレル研磨機CFB-36、600本/バッチ |
| 長尺・極細 | 直径に対して長さが大きく、直線部が曲がる | 形状に合わせた特殊治具で直線部の変形を抑えながら先端をR付けする | SUS304 φ0.2mm×L350mm、回転バレル、1,000本/バッチ |
| 薄板リングの内径側 | 外周ではなく内径エッジにRを付けたい | 研磨石が内径に入り込むサイズを選び、内径側のRを測定しながら条件を決める | SUS430シム 内径φ40mm×外径φ50mm×t2.0mm、内径R0.2以上、30L遠心バレル機、400枚/バッチ |
共通しているのは、ワークを「守りながら削る」段取りです。バレル研磨は本来ワークを槽内で自由に動かす工法ですが、変形しやすい形状では治具で保持し、研磨石との当たり方を制御します。ステンレス特有の注意点はステンレス部品のバレル研磨|バリ取りと光沢仕上げ、変形・打痕の原因と対策はバレル研磨のトラブル対策|打痕・変形・黒ずみの原因にまとめています。
現場の知見:加工事例に見るR付けの実際
手作業から量産へ。SUS304製φ0.6mm極細曲げパーツの先端R付けは、細径とカーブ形状のため手作業ではRが安定せず、国内に加工先がなく輸入品に頼っていたワークです。治具で1本ずつ整列・固定し、遠心バレル研磨機CFB-36で先端部にR0.1〜0.2程度のRを付けることで、個体間のばらつきを抑えた国内加工に切り替えられました。
長尺でも先端だけを狙う。SUS304製φ0.2mm×L350mmの長尺パーツでは、先端部のR付けと直線部の変形抑制を両立する必要がありました。特殊治具を使い、直線部の状態を確認しながら回転バレル研磨で先端を丸め、1,000本/バッチで処理しています。
内径側のエッジも対象にできる。SUS430製シムの内径R付けでは、板厚2.0mmのリング形状の内径側エッジをR0.2以上に仕上げ、30L遠心バレル機で400枚/バッチの量産に対応しました。外周だけでなく内径側のRを指定される部品でも、研磨石のサイズと条件を合わせれば対応できます。
いずれの事例も、具体的な研磨条件や治具構造は非公開ですが、共通するのは「試作でRと寸法を測ってから量産に入る」進め方です。
R値の確認と量産での管理
「R0.2以上」という指示に応えるには、加工後のRを測る手段が要ります。当社では表面粗さ・輪郭形状測定器でR値の測定と形状変化の確認を行い、マイクロスコープで微細部のバリ残りを確認しています。試作段階でRと寸法変化の実測値をお客様と共有し、条件(機械・研磨石・時間)を確定したうえで量産に移ります。
量産に入った後は、確定した条件を記録・共有して同じ仕上がりを再現します。工程間検査として面粗さ測定を行い、ISO 9001に基づく管理体制でトレーサビリティを確保しています。詳しくは当社の強みとお取引の流れをご覧ください。面粗さの指標については表面粗さとバレル研磨の基礎知識|Ra・Rzの測定方法で解説しています。
なお、めっきや塗装の前工程としてエッジにRを付けると、角部の膜厚不足や塗膜の割れを防げます。この用途はめっき・塗装の前処理としてのバレル研磨で詳しく取り上げています。
よくあるご質問
バレル研磨でどのくらいのRまで付けられますか?
R0.1〜0.2程度の小さなRから対応しています。大きなRほど時間がかかり、平面も削られて寸法が動くため、狙うRの大きさと寸法公差をお知らせいただいたうえで試作で確認します。
特定のエッジだけにRを付けることはできますか?
バレル研磨では研磨石が当たるすべての角が丸まるのが基本です。ただし治具で保持して先端部だけに研磨力を集中させた事例もあります。形状と要求によりますので、まずはご相談ください。
C面取り(45°の面取り)はできますか?
バレル研磨で付くのは角面ではなく丸み(R面)です。C面が図面で指定されている場合は切削で面取りし、その後のバリ取りやエッジの微細な丸めをバレル研磨で行う組み合わせが一般的です。
φ1mm以下の細い部品でも変形しませんか?
φ0.2mm・φ0.6mmのSUS304製パーツを治具で保持してR付けした実績があります。形状によっては変形リスクが残るため、内容にもよりますが、まずは現物で試作させていただくのが確実です。
Rが付いているかどうかはどう確認しますか?
表面粗さ・輪郭形状測定器でR値を測定し、必要に応じてマイクロスコープで拡大確認します。試作品の測定結果をお客様に共有したうえで量産条件を確定します。
まとめ
R付け・面取りは、バレル研磨の「角から先に削れる」性質をそのまま活かした用途です。
- 向く条件 → R0.1〜0.5程度の小さなR、全周エッジ、数百〜数千個の量産
- 注意点 → Rと同時に平面も削られる。寸法公差から逆算して条件を決める
- 難しい形状 → 極細・長尺・薄板は治具で守りながら削る。内径側のR付けにも対応
当社は1984年の創業以来バレル研磨を専門に手がけ、φ0.2mmの極細パーツから板厚2mmのシムまで、R付けの量産に対応してきました。エッジのR指示でお困りの際は、図面と現物をお送りのうえお気軽にご相談ください。