SUJ2鋼球の粗面化で油保持性を向上|バレル研磨による表面改善事例
鏡面仕上げの鋼球では油が馴染みにくいという課題を、バレル研磨による粗面化で解決。表面に微細な凹凸(オイルポケット)を形成することで油膜の安定性が向上し、摩耗や性能低下を軽減した事例をご紹介します。
結果
バレル研磨による粗面化で、鋼球の油保持性が向上 表面に適度な粗さを付与することで、潤滑油が保持される微細な凹凸(オイルポケット)が形成されました。その結果、油膜の安定性が向上し、摩耗や性能低下が軽減されました。
Before / After
課題
鏡面仕上げの鋼球では油が馴染みにくい 従来、鋼球は鏡面に近い滑らかさを持っていましたが、表面が滑らかすぎることで以下のような問題が発生していました。
・油が留まらない ・油膜が切れやすい ・摩耗が進みやすい
「油膜が安定せず、性能が出ない」という状況が課題でした。
改善手法
目的に合わせた"粗さの設計"による表面改善 バレル研磨では、研磨材・時間・条件を調整することで、狙った粗さを安定して再現できます。本事例では以下の手順で課題を解決しました。
① 粗さを形成するための研磨材を選定 油保持性を高めるため、微細な凹凸が均一に付与できる粒度の高い研磨材を選定しました。
② バレル研磨で分単位の研磨時間を調整 粗さ(Ra値)は研磨時間に比例して変化するため、以下の工程を繰り返しました。
1.数分単位で研磨 2.粗さを測定 3.目標値に合わせて時間を微調整
この工程により、油保持に最適な粗さを精密にコントロールしました。
③ 狙った油膜保持性に適した表面を実現 粗すぎても滑らかすぎても性能が得られないため、用途に合わせて最適な粗さへ調整。安定した油膜を保持できる表面を再現することに成功しました。
詳細
圧入部品の密着性向上にも粗面化が有効 バレル研磨による"粗さ設計"は、鋼球以外の部品でも効果があります。 たとえば、SUS材の圧入部品に粗さを付与することで摩擦係数が増加し、圧入後の密着性や保持力が向上するといった応用例もあります。 圧入部品では、表面が滑らかすぎると保持力が不足するため、適度な粗面化が組付け品質の改善に役立ちます。