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バレル研磨とは?5つの方式の特徴・用途・メリットを徹底比較

バレル研磨は、ワーク(加工対象物)とメディア(研磨材)を一緒に動かすことで表面を仕上げる加工技術です。バリ取り、面粗さ改善、光沢仕上げなど幅広い用途に対応しており、製造業において欠かせない工程のひとつとなっています。

本コラムでは、代表的な5つのバレル研磨方式について、それぞれの特徴・動き・適する部品・強みと弱みをわかりやすく解説します。最後に比較表も掲載していますので、方式選定の参考にしてください。

バレル研磨方式まとめ(5方式)

1. 回転バレル(ロータリーバレル)

■ 特徴 六角・八角ドラムが回転し、ワークとメディアが転がりながら滑る運動で研磨。 最もシンプルで導入しやすい方式。

■ 動き 「山が流れる」ように穏やかなスライド研磨。

■ 適する部品 ・小物~中物 ・樹脂・金属 ・光沢仕上げ、面粗さ改善に向く

■ 強み・弱み ✔ コスト安い、扱いやすい ✔ 材料に優しく光沢が出やすい ✘ 加工力弱い、時間長い ✘ 大きなバリ取りには不向き

2. 遠心バレル(ハイエナジーバレル)

■ 特徴 バレルとターンテーブルが反転し、強い遠心力(4〜10G) で超高速研磨。 短時間で高品位仕上げ。

■ 動き 高圧でメディアがワークに押し付けられる「強制スライド研磨」。

■ 適する部品 ・微細部品 ・複雑形状 ・高い表面品質を求める精密品

■ 強み・弱み ✔ 超短時間(10〜30分) ✔ 鏡面・微細バリ取りが得意 ✘ 設備コスト高い ✘ 衝突打痕注意(メディア選び重要)

3. 振動バレル(バイブレーション)

■ 特徴 ボウルを振動させ、メディアが 渦流(トロイダルフロー) を形成。 均一な研磨が得意で、バリ取りで最もよく使われる方式。

■ 動き 回転+上下振動の複合流動。 ワークを包み込むような動き。

■ 適する部品 ・中〜大物 ・プレス・鋳物・切削部品 ・R付け・エッジ取り

■ 強み・弱み ✔ 均一処理、再現性高い ✔ 大きい部品も可 ✘ 音・振動が大きい ✘ 細長品は変形リスク

4. 流動バレル(ドラッグ/ストリームフィニッシュ)

■ 特徴 治具に固定したワークをメディアの中で高速に公転・回転させる方式。 部品同士が一切ぶつからないため精密仕上げ向き。

■ 動き メディア中を高速で引きずる「強流動研磨」。 OTECなどは流動を最適化し高品位。

■ 適する部品 ・ギア、金型、航空・医療部品 ・大物一点物の高精度仕上げ

■ 強み・弱み ✔ 超精密仕上げ ✔ 打痕ゼロ(治具保持のため) ✘ 設備コスト高い ✘ 治具設計が必要

5. 磁気バレル(マグネチックフィニッシャー)

■ 特徴 磁石の回転で細いステンレスピンが高速回転し、内外面を微細研磨。 非常に短い処理時間が特徴。

■ 動き ピンがワークに巻きつくように動き、通常メディアが届かない場所まで研磨。

■ 適する部品 ・小型・薄物 ・微細穴・溝・複雑形状 ・ジュエリー・医療精密部品

■ 強み・弱み ✔ 到達性が非常に高い ✔ 5〜30分で仕上がる ✔ 鏡面に近い仕上げ ✘ 大物・重量物は不可 ✘ 大きなバリ取りには向かない

方式比較表

方式 加工力 時間 微細形状対応 適した部品 特徴
回転バレル 長い 小物・樹脂・金属 光沢・面粗度改善
遠心バレル 非常に大 短い 微細・精密 高品質・鏡面
振動バレル 中〜大物 均一・R付け
流動バレル 大〜非常に大 精密・高付加価値 打痕ゼロ・治具保持
磁気バレル 小〜中 非常に短い 非常に高い 微細穴・複雑形状 内面・細部仕上げ最強

まとめ

バレル研磨は方式ごとに得意分野が異なります。加工力・処理時間・対象ワークのサイズや形状に応じて、最適な方式を選定することが高品質な仕上げへの近道です。方式選定や条件出しでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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