TECH COLUMN

バレル研磨で高精度と大量生産を両立させる3つの戦略【遠心・振動・回転バレル機の使い分け】

バレル研磨で高精度と大量生産を両立させる3つの戦略【遠心・振動・回転バレル機の使い分け】

はじめに

ご質問ありがとうございます。遠心バレル機、振動バレル機、回転バレル機といった各種設備を使い分け、高精度と大量生産を両立させる戦略は、加工対象の特性や求められる仕上がり品質に応じて、各バレル研磨機の強みを最大限に活かすことにあります。

具体的には、以下の3つの主要な戦略によって、高い生産効率を維持しつつ、精密な仕上がりを実現しています。


1. 各設備特性に基づいた使い分けと最適化

バレル研磨は、一度に大量の部品を処理できるため、大量生産に不可欠な技術ですが、高精度を実現するためには、部品の形状や要求品質に応じて最適な機械を選定します。

A. 回転バレル機(大量処理と汎用仕上げ)

回転バレル機は、円筒状の容器を回転させ、遠心力と摩擦を利用してバリ除去や表面仕上げを行う、最も一般的な加工方法です。

大量生産性: 200ℓ回転バレル機を使用し、小型部品(自動車の外装装置用クラッチ部品など)を1バッチ5000個、産業機械用継手を1バッチ3000個、大型リング部品(φ100㎜)を1チャージ400個 といった大規模な処理を短時間で実現できます。

均一な仕上げ: 回転運動による摩擦と研磨力を活用し、短時間で均一なバリ除去を可能にし、後工程の品質向上に貢献します。

B. 振動バレル機(大量処理と均一なスケール除去)

振動バレル機は、タンク全体を振動させることで部品と研磨石に螺旋運動を発生させ、部品と研磨石が細かく擦れあうため、傷や打痕の発生が少ない傾向にあります。

大量処理・複雑形状: 大量加工に向いており、例えば、自動車外装装置用ヘリカルギヤの歯底部分に残る熱処理スケールなど、通常の研磨方法では除去が難しい箇所に対して、部品全体を均一に研磨しながら効率的にスケールを除去できます。

処理能力の例: 100ℓ振動バレル機で軸受け部品を1チャージ1000個、100ℓ振動バレル機でヘリカルギヤを1バッチ6000個処理した事例があります。

C. 遠心バレル機(高精度・短時間処理とキズ抑制)

遠心バレル機は、強力な遠心力を利用し、短時間で強く研磨することを目的としています。

高精度仕上げ: 一般的な回転・振動バレル機に比べ短時間で高い研磨効果を得ることができ、微細なバリやスケールの除去、複雑形状の部品への高精度な仕上げに適しています。小型のタンクサイズのため、小型製品や少量での処理に向いています。

精密なバリ除去: エンジン用ギヤシフトカムプレートのスケールやバリを、30ℓ遠心バレル機で1チャージ1000個処理し、寸法安定性と表面品質を両立させています。

微細な加工: 極細のステンレス曲げパーツの先端に微細なR0.1程度の丸みをつけるR付け加工にも、30ℓ遠心バレル機と特殊治具を用いて対応しています。


2. 複数工程の連携による複合的な品質要求の達成

一つの工程では対応できない複雑な品質要求(例:粗いバリ除去と高い表面平滑化の両立)に対しては、異なる特性を持つバレル機を組み合わせる多段階処理を採用しています。これにより、効率的な大量処理と高精度の仕上げを両立させています。

スケール除去と光沢仕上げの連携

自動車クラッチ部品の処理では、まず振動バレル機で熱処理スケールを均一に除去し、続いて遠心バレル機に移行して高速回転による強力な研磨力で光沢仕上げを施すことで、12,000個の大量処理と高品質な仕上がりを両立しています。

粗バリ除去と平滑化の連携

パーキングアクチュエータの焼結部品に対しては、第1工程で100ℓ振動バレルを用いてスケールと粗バリをしっかり除去し、第2工程で100ℓ回転バレルに切り替えて表面平滑性を確保し、摺動性向上を実現しています。


3. 高精度維持のための加工制御と品質管理体制

大量生産においても高い精度(0.1mm〜1/100mm、時には1ミクロン単位)を維持するために、以下の技術的な工夫がされています。

キズ・打痕対策

バレル研磨では部品同士の接触によるキズや打痕がデメリットとなることがありますが、これを防ぐために特殊な対応が取られています。

個別仕切り槽の活用: 打痕が許されないオイルポンプ部品や医療機器向け部品など、高精度が求められる部品には、個別仕切り槽付きの遠心バレル機を使用し、部品同士が直接接触しないように各部品を独立したスペースで研磨し、打痕キズゼロを実現しています。

投入量の調整: ステンレス製ヒンジのように表面仕上げが重要な部品に対しては、100ℓ回転バレル機を使用しつつ、投入量を抑える(1バッチ150個など)ことで、部品同士の衝突を最小限に抑え、キズを防いでいます。

研磨条件の最適化

部品の形状や材質に合わせ、研磨メディアの種類やコンパウンド、回転速度、処理時間を何度も調整し、最適な加工条件を確立しています。特に複雑な形状に対しては、様々な研磨石を混合させて均一な仕上がりとなる方法も行われています。

徹底した品質保証

量産加工においても品質の安定性を確保するため、ISO 9001に基づく管理体制を構築し、以下の測定器による検査を徹底しています。

レーザー形状測定器やデジタルマイクロスコープ(4K含む)を用いて、表面状態、バリの残存、寸法や形状の安定性を数ミクロン単位で高精度に確認しています。

ロット管理とトレーサビリティを徹底し、加工条件のデータ保管と作業の標準化(作業標準書の整備)を行うことで、担当者や作業者が代わっても前回と同様の品質を再現できる体制を整えています。

電話で相談

すぐに担当者へ直通

03-3617-1128

平日 9:00〜18:00

資料ダウンロード

設備一覧・検査体制を公開

PDF資料を入手

最新設備リストと成形範囲を掲載